街路樹や公園の樹木のなかに暮らすミツバチはほとんどの場合ニホンミツバチです。彼らは食糧となる花の蜜や花粉をもとめ、日々忙しく飛び回っています。街中でこのような野生昆虫の暮らしを間近に見ることができるのは貴重な体験です。彼らの生活の邪魔にならないよう観察をするためのポイントをまとめました。
◆服装と立ち位置
・黒系の服装は避ける
・帽子かハンカチで髪の毛を覆う
・香水などはミツバチを引き寄せるので注意
・巣穴の正面には立たない
・斜め横、できるだけ低い位置で見る
・巣に近づくときはゆっくりと
人間が巣に近づいて来ることはじつはミツバチにとってはストレスです。まして黒っぽい色の服を着ている人がいれば、ハチミツを狙っている天敵の熊だと思い攻撃をしてくる場合があります。黒系の服装は避けたほうが無難です。
また、攻撃ではありませんが、とくに春から夏にかけて、ミツバチの出入りが多い時期に巣穴の付近に立つと髪の毛の中にミツバチが入ったり体に当たることがあります。必ず帽子を被るか、無い場合はハンカチで髪の毛を覆ってください。
香水や整髪料がミツバチを引き寄せる場合もあります。髪の毛の中に入ってしまったミツバチは出ようとしてもがきます。その場合、つられてパニックにならないようにしてください。人が手を素早く振ったりバタバタさせる動作はミツバチを攻撃モードにさせてしまうので危険です。
観察するときは巣穴の正面に立ってはいけません。ミツバチの出入りを遮らないよう斜め横から、できればできるだけ低い位置で見てください。
巣に近づくときはゆっくりと動いてください。巣の前で早い動作をしてはいけません。ゆっくりと近づいても「体当たり」してくるミツバチや、顔のまわりにうるさく「まとわりつく」ミツバチがいた場合は「これ以上巣に近づくと刺すぞ」という警告の意味です。そのときは観察をあきらめて静かに巣から離れてください。
◆写真を撮る
撮影をする場合もミツバチとぶつからないようできるだけ低い位置から巣穴を狙ってください。スマートフォンの場合、通常の写真撮影や動画撮影より写真であれば連写モード、動画であればスローモード撮影をおすすめします。
◆観察の前に知っておいていただきたいこと
「ニホンミツバチはおとなしいのでめったに刺さない」とよくいわれます。飼育の入門書などにもそう書かれていることがよくあります。健康な群の場合はおおむね確かにそうなのですが、やはり生き物ですので「絶対」ということはありえません。気候の変化や天敵動物による刺激といった外的環境の影響、また群の内部のコンディションなどが原因で攻撃的になることもあるのです。
安全な観察をするためには「もしかしたら攻撃してくるかも」ということを常に頭の隅に置いておいてください。ミツバチの警告行動があった場合の逃げ道を想定しておくこと、複数人での観察は各自スペースを空けること、通行人がいるときは観察を避ける心がけが大事です。なぜなのか。以下にあえてシビアなケースを掲げておきます。
◆ミツバチの攻撃とは
ミツバチの攻撃は最初は一匹が刺すだけですが、問題はそのときに発せられる警報フェロモンによって他のミツバチもいっせいに攻撃モードになって襲ってくることです。複数のミツバチの攻撃で近くにいる関係のない人までもが巻き添えになる可能性があるのです。
◆万一、刺された場合
毒針をできるだけ早く抜いてください。毒は水溶性です。水道水で患部を洗い、冷やすことは有効です。アンモニアは効きません。気分が悪くなったり息苦しさを感じた場合はアナフィラキシーショックの可能性があります。早めに病院へ行き診断を受けてください。
◆おわりに
地域の植物と密接に関わって生きているニホンミツバチを観察することは地域の自然環境を知る上でいろいろな示唆を与えてくれます。色や形だけでなく特有の飛び方や羽音がわかるようになると逆にほかの種類のハチの存在にも気づきやすくなります。ぜひ、安全に楽しく観察をして彼らへの理解を深めていただくことを願っています。